ものづくり
昼下がりの喫茶店。
窓の外から陽が差し込むポカポカとした陽気は嫌でも眠気を誘発する。
はずなのだが、あるテーブルにつく青年は目の前に座る女性に向かって熱弁を振るっていた。女性はその様子を退屈そうに聞いている。
「たまにさ、自分は人と関わるのが好きだから!とか言って営業とかサービス業してる奴いるじゃん?あれ違うと思うわけよ」
青年が言う。
「何で?」
女性がジトッとした瞳で青年を見る。見ているとはいっても、彼女の意識の8割方は手元にある新発売のフラッペに向いていると思われる。
「営業とかサービス業にしかり、事務作業する場合もあると思うんだよ。反対に、エンジニアとかのものづくりが主の職種だって、顧客からニーズ聞いたりするときもあるわけだろ?」
「まー、そうかもね」
女性が淡々と答える。
「それに、エンジニアが作ったものだって、誰かが使うわけだよ。そのことを想像できたら、それって半分人と関わってるのと一緒だよなって俺は思うわけよ」
「へー」
「人と関わりたいから営業とか言ってる奴らは、つまるところ、本当の意味で人と関わってないんじゃないかと思うんだよ。他の人の人生についての考察が浅いんじゃないかって」
「ふーん」
「だから俺、エンジニア転職しようと思うんだよ。テック○○○なら、今なら就職サポートついて、学費タダだからな。俺もこのIT時代の波に乗ってみるよ」
「あ、そーなんだ。ところでさ、、」
「何だ?」
「人と関わりたいから人間の考えは確かに浅いけどさ、流行りに便乗する人間も浅はかだと思うのは私だけかな?」
「あ」
おわり