真斗と実里
テストの問題のように人生に答えがあるわけじゃない。
人生に意味なんてなかった。
そんな当たり前のことに、今ようやく気付いた。
「人生に意味を持たせるのは自分。つまり自分次第で人生は変えていけるんだよ」
昼下がりの某チェーン店のファミレス。目の前に座る少女に真斗はそう宣言した。
その少女、実里は真顔で真斗を見つめる。
「え、何言ってんの?」
「だから人生は自分次第で変えていけるって話だ。お前も今から宝塚に入れる」
「いやマジで何言ってんの?てか宝塚に入りたくないし。宝塚の人には申し訳ないけど」
「お前はるひ姉さんの前でそれ言えんのか」
「言わないよ。そもそもはるひ姉さんと会う機会ないから。てか、はるひ姉さんって何?」
「とにかく、人生とは自分次第で変えていけるんだよ」
「いや、うん、だから、それが何?みんな知ってるでしょ」
「いーや!お前は分かっちゃいない。俺が言ってるのは人はいつからでも変われるって話をしてんの。つまりお前は宝塚に入れる」
「何なのその謎の宝塚推し」
「とにかく、お前は今、なんか諦めてることとかないのか?諦めた夢とかあるだろ?」
「ないよ。てか、もしかしてマルチの勧誘とかじゃないよね?わたしやんないよ?」
「アホか。マルチじゃない。はるひだバカ」
「何もかかってないから」
「しっかし、俺は盲目だったよ。ずっと自分のことばかり見てた。自分がいつか死ぬことにばかり目がいって現実なんざ見ちゃいなかった。やっと気付けたよ」
「そーなんだ。よかったじゃん。ただ、わざわざ呼び出されてまで聞きたい話ではなかったよ。代わりになんか奢って」
「お前が宝塚入ったら考えてやるよ」
「何でだよ」
「ま、その当たり前のことが見えなくなるもんなんだよ、人間ってのは。そして、それは1人では見つけられない。お前に会えて、俺は幸せモンだ。やっと気付けた」
「なら奢れよ」
「俺はもう後悔しねぇ。ウダウダ悩まねぇ。だから何でも自分で決める!人生を決めるのは俺だ!よし!宝塚入れお前!」
「わたしの人生はわたしに決めさせろよ」
おわり